彩―IRODORI―
ホームルームが終わって一時間目が始まるまで、少し時間がある。
だからあたしは、いつもこの時間を利用して宿題をする。
家でももちろん少しは勉強をする。
そうでないと、ついていけなくなるから。
まあ、もう手遅れなのかもしれないけど。

英語の教科書を開いたとき、カズヤ先生があたしの席にやって来た。

「高坂さん。ちょっといいかな」

クラスでも目立たない方のあたしに、突然カズヤ先生が声をかけるなんてビックリだ。
チャコのノートを写そうとする前で良かった~なんて思ったけど、

「宿題写すの邪魔しちゃってゴメンね」
「ぶへっ!」

バレてたとは。

「実は世界史のノートを貸してほしいんだ。高坂さん、きれいにノート写してたから」
「ええっ」

困る。
それは実に困る。
あたしがまじめにノートを取るようになったのは、カズヤ先生が後ろにいるからだ。
だから、今までのノートは眠くてミミズ字になったのや、ちょっとよだれが垂れてる。

「この前のところでいいんだ。いいかな」

うう、その爽やかフェイスは反則だ。
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