契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

だが、翌朝、そんな栞の決意は無残にも崩れ去った。

「たっくん!放して……っ!
……あたしに朝ごはんをつくらして……っ‼︎」

神宮寺の書斎の奥にあるベッドルームでは、栞の叫び声がこだましていた。

「……そんなの、テキトーでいいからさ。
それより、おれが……栞を喰いたい」

朝から(と言っても、すでに「おはよう」と挨拶できる時間ではないが)色気をダダ漏れさせた神宮寺が、栞の耳元でささやく。

「あかん……あかんって……
あたしには……たっくんのために……
絶対にやらなあかんことが……」

このままでは、この未明に栞が計画(プラン)を練った「たっくんをいつまでもつなぎ留める作戦」の第一弾が遂行できない。

……あたしはなんとしても一階のキッチンに行かなあかんのに……っ!

栞は全力で身を(よじ)った。(しょ)(ぱな)から「不発弾」にさせるわけにはいかないのだ。

「……なんだ、その京都弁……栞、おれを煽ってるのか……?」

だが、しかし……神宮寺の目に情欲の炎を煌々と灯らせてしまった。万事休す、である。


そのとき突然、ベッドサイドに置いていた栞のスマホがヴヴヴッと鳴った。

ほんの一瞬だけ……神宮寺の気がそっちに逸れた。これ幸いと栞はその隙を突いて、ダイブするようにベッドサイドのスマホを掴み取った。

「……その音なら通話じゃなくて、メールかLINEの通知だろ?」

興を削がれた神宮寺が一気に不機嫌になる。
栞はパスコードをタップした。すると、ポップアップが出てきた。


LINEを送ってきたのは……姉の(やや)だった。

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