契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「……でも、一日くらいやったら……」

という栞のつぶやきにも、神宮寺から「ダメだ」と即座に却下される。

「その『一日』が命取りになることがあるんだ。のこのこ外出した際に、ここぞとばかりにパパラッチみたいなヤツに撮られでもしたらどうするんだ?栞を世間の目から守るために、おれたちはここにいるんだぞ」

それでも、栞は諦めきれなかった。
ほかでもない、姉の稍のことだからだ。

「あの……姉はこの六月に結婚するはずやったんですけど、急に婚約破棄になったんです。
そのことを、神戸の実家に帰って父親に説明するんやと思うんです。一人では心細いやろうから、一緒についていてあげたいんです」

そして、ダメ元で、栞は上目遣いをして神宮寺の「情」に訴えてみる。

「……それでも……あきませんか?」


ところが、その直後、栞は「情」欲の炎を復活させた神宮寺にがっちり抱き(すく)められ、そのままベッドに沈められることになった。

結局、GWに姉に会えるどころか、北野ホテルも真っ青の朝食(モーニング)も不発弾に終わった。

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