契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
栞は、LINEで姉の稍を開いて【無料通話】をタップした。
数コールのあと、声が聞こえてきた。
『もしもし……栞ちゃん?どないしたん?』
姉の声だ。申し訳なさでいたたまれなくなる。
「あ、おねえちゃん……ごめん。そっちには行かれへんようになってしもうてん」
『ええっ、なんでっ? 会いたかったのにぃ』
……あぁ、おねえちゃん、本当にごめん。
『栞、来られへんようになってんてぇ』
父に「報告」しているのだろう。稍の声が少し遠くなった。
『ええっ⁉︎ ウソやろっ⁉︎ なんでやねんっ⁉︎』
男の人の声が飛び込んできた。
……おとうさん? それにしては……なんか声が若いような?
『栞ちゃん、なんでなん?会うの、楽しみにしてたのにー』
稍の声がまた近くなった。心の底から残念そうな声だ。
『うん、おねえちゃん、ごめんなぁ。
あの……先生が……その……急な仕事で……離してくれへんくって……』
「事情」は話せないから適当な言い訳となり、疾しさからどうしてもごにょごにょした口調になってしまう。
しかし、昔からなにかと察しの良い稍は、栞の言わんとするところを理解した。
『わかった、わかった』
しかも、ありがたいことに、栞の「事情」をすんなり受け入れてくれたようだ。
『……あ、智史……栞と話したい?』