契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
Chapter4

✿経緯✿


それは、去年の初め、長年別居していた両親がとうとう離婚することになったというので、姉の(やや)が京都の町家に帰省したときのことだ。

いったいどこからその話になってしまったのか、今となってはもう栞には思い出せないが、

『……おねえちゃんも……あたしがおとうさんと血ぃのつながった子と(ちゃ)うって思うてはる?』

坪庭に面した奥の間で、取り込んだ洗濯物を一緒に畳みながら、まるで「今日の晩ごはん、なににしょう?」という口調で、(しおり)は姉に尋ねていた。

稍はほんの一瞬、この世界が完全に止まってしまった、というような顔になったが、すぐにふっ、と気のない笑みを浮かべた。

『栞ちゃん……それは、おねえちゃん(あたし)の方はおとうさんと血ぃのつながった子や、っていう意味で言うてんのん?』

栞も姉と同じ笑みを浮かべる。

『うん、そう。(ちゃ)うのは……あたしの方だけ』

母親の方だけが同じ姉妹であるが、その笑顔はよく似ていた。


『……おねえちゃん、あたしの本当(ほんま)のお父さんのこと、知ったはるん?』

< 112 / 214 >

この作品をシェア

pagetop