契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
『……栞ちゃんも一緒に、みんなでごはん食べててんよ』
……えっ?
『じゃあ、その人……あたしの「兄」にあたる人って……あたしのこと知ってはるのん?』
すると、稍はくすり、と笑って肩を竦めた。
『もちろんや。あんたのこと「栞」って呼んで、えらいかわいがってはったえ。
……そのときは、まさか栞が自分の「妹」やなんて夢にも思うたはらへんかったやろうけどなぁ』
……そうか、あたしのことを知ってるどころか、かわいがってもくれてはってんや。
『お父さんがポートアイランドにある企業で研究職に就いたはったから、その血ぃなんやろうなぁ。ものすごう勉強ができてパソコンにも興味持ってはったわ。
おかあさんの弟の聡にいちゃんと気ぃが合うて、いつもなんや小難しいコンピュータのプログラミングの話ばっかししてはってん。
せやけど、その話の中に赤ちゃんやった栞も割って入ってたんやで。なに言うたはるのかは皆目わからへんかったけどなぁ』
だが、しかし。
……今となっては、もうそんなふうには思うてくれはらへんやろうな。
自分ちの家庭を崩壊させた「元凶」があたしってわからはったら、かわいさ余って憎さ百倍どころやないやろ。
『へぇ……そうなんや。
……なぁ、「聡にいちゃん」って……神戸の震災で亡くならはったっていう叔父さんのこと?』