契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「それではどうぞ、どちらからでもお試しくださいませ」

「ええっ……こんなにあったら、どれからつけたらええのか、わからへんわぁ」

アクセサリーに慣れない栞は困惑した。

「とりあえず、端から順につけていってみな?
おれは栞が気に入ったんなら、なんだっていいからさ」

神宮寺は上段の一番端にある一対の指輪のうち、栞の号数(サイズ)の方を引き抜いて、栞に渡した。

……こんな指輪一つが、池原はもちろんほかのヤツらにも「栞がおれの妻」であることを知らしめるのか。

そう思うと、知らず識らずのうちに(とろ)けるような笑みがダダ漏れしていた。

「ええっ、そんなん責任重大やんかぁ。二人の結婚指輪やのにぃー。たっくんも一緒につけてみようよー」

……たっくんが気に入った指輪にしやんと、「たっくんをいつまでもつなぎ留める作戦」の第二弾も不発に終わるやないのっ⁉︎

焦った栞は、あわてて神宮寺の方の号数(サイズ)の指輪を抜き取り、彼に渡す。


すると、登茂子が(たま)りかねたかのように、ぶふっと噴き出した。

「……あぁ、申し訳ありません。
あまりに『普通のお若いカップル』に見えたもので……いつも冷静沈着で滅多に表情をお崩しにならない、あの『拓真さん』が……」

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