契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「……栞、どうする?」

神宮寺が栞の顔を覗き込む。

「うーん、普段、指輪をつけないあたしでもすっごく快適につけられそうやねんけど……」

一つだけ、気になることがあった。

「なんか……ちょっと……重いような……」

あぁ、と登茂子が肯く。

「プラチナは比重が高いので、重く感じてしまわれるのは無理もありませんね。
でしたら……もしよろしければ、ゴールドをご検討なされてはいかがでしょうか?
日本の方は酸化しづらいということもありプラチナを好まれますが、欧米ではプラチナはシルバーに見えてしまうということもあって、ゴールドが定番でございます。
こちらのタイプはあいにくプラチナだけのお取り扱いになっておりますが、ゴールドでの対応が可能かどうか、問い合わせてみますね」

待っている間に、栞はゴールドの指輪をつけてみた。確かに、軽い。
でも、やっぱりデザインはJubileeのものがよかった。


それからしばらくタブレットでやりとりしていた登茂子が、顔を上げた。

「……お待たせしました。
ただいま、メールで問い合わせましたところ、セミオーダーという形で承れるそうです。
それで、たまたまデザイナーの久城さんと連絡が取れまして、奥さまの雰囲気や(たたず)まいをお伝えしましたところ、通常のイエローゴールドよりもピンクゴールドの方がお似合いになるのではないかと。
……あ、デザインは異なりますが、こちらがピンクゴールドでございます」

栞は早速つけてみた。

「もともと、日本の方には肌馴染(なじ)みの良いお色味ですのでよくお似合いですよ」

銅を混ぜることで赤みを出したゴールドは、実際の年齢よりずっと若く見え、どことなく少女の面影を残す栞に合っていて、さらに彼女の色の白さをも際立たせていた。


「青山さん……気に入った。
おれも栞もピンクゴールド(これ)にするよ」

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