契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

栞はまっすぐ登茂子を見上げた。

「うちの姉は本当(ほんま)にあなたの息子さん……あたしの『お兄さん』のことが好きなんやと思います」

その言葉に、登茂子は目を(すが)める。

「栞ちゃん……あんた、自分が生まれた経緯(いきさつ)を知ってんねんやろ?
……せやのにわたしが、あの子らの結婚を許せると思う?」

血も凍るような氷点下の声で訊く。
どうやら、栞は彼女の「地雷」を踏んでしまったようだ。

登茂子は「お客様」の前では絶対に見せない、社内で社員たちにだけ見せる「華丸の女帝(クィーン)」と呼ばれる顔になっていた。その迫力は半端ない。

思わず、栞の喉がひりついた。
ごくり、と唾を飲む。

そのとき突然、隣に座っていた神宮寺が栞の手を掴んだ。そして、互いの手のひらをがっちり合わせ、そのまま互いの指と指を絡めていく。

……「恋人つなぎ」や。

その瞬間、栞はえもいわれぬ「力」が心の底から湧き上がってくるのを感じた。

そして、栞は悟った。


……あたしは、一人やない。
あたしには……たっくんがおる。

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