契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「あ、あ、あんたねぇっ!
わたしらのことなぁんにも知らへんくせに、勝手なこと言わんといてよっ⁉︎」

登茂子が立ち上がらんばかりに激昂する。

「だからこそ……客観的な立場で俯瞰的に見つめられると思うんですけど」

しかし、栞は平然と返した。

情報(データ)があらへんので、あくまでもあたしの憶測ですが……もしかして、あなたの結婚は、最初からボタンを掛け違えてませんか?
あたしは本当(ほんま)の父のことをほとんど知りませんが、あなたとはミスマッチなような気がしてならないんですよね。
……まぁ、世の中にはそのような夫婦もいっぱいいるとは思いますが」

「……その根拠は?
理屈っぽいあなたが、何の根拠もなく憶測だけでそんなこと言うはずがないって、残念ながらこの短時間で思い知ったわ」

登茂子は込み上げてくる怒りを「華丸の女帝(クィーン)」という異名どおりの強靭な精神力で抑えつつ、最大級のイヤミを込めて言ってやった。

「えっ、しゃべってええんですか⁉︎
あんまし、あたしばっかししゃべんのもどうかなぁ?……って思ってたとこなんですよー」

ところが、栞はうれしそうにニコニコしている。さすがの登茂子も、この短時間ではまだ栞の「()天然記念物」には気がついていなかった。

たまらず、神宮寺が、ぶはっ、と噴き出した。

すると、登茂子が「上お得意様」に対してはあるまじき、絶対零度のガチガチに凍ったブリザードな視線を放った。
それでもまだ、神宮寺は肩を震わせて笑っている。

< 160 / 214 >

この作品をシェア

pagetop