契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
栞は登茂子の「お言葉」に甘えることにして、心にもない「取ってつけたようなこと」を言うのをきっぱりやめた。
「えっと、あの……あたし、自分が婚姻届を出すことになって、つくづく思ったんですけど……」
栞は登茂子を見る。
今の彼女は怒りもせず、かといって笑いもしていない、ニュートラルな表情だった。
「あたしにはそれが……ただの紙切れにしか見えへんのです」
しかし、とたんに登茂子だけでなく神宮寺までもがぎょっとした顔になる。
「あ、『紙切れ』は言い過ぎやったですね。
……言い直します」
栞は、ふふっと朗らかに笑った。
「あたしには、自分の書いた婚姻届が……
……ただの『契約書』にしか思えないんです」