契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「ふうん……だったら安心していいぞ、栞。
先刻『自分が書いた婚姻届が契約書にしか思えない』とか言ってたけどさ。
今のおれは、自分が書いた婚姻届をもう『紙切れ』とも『契約書』とも思ってないぜ」
神宮寺はきっぱりと言い切った。
「確かに、普通とは順序が違った結婚だったのは否定しねぇけどよ。
今ではおれと栞はしっかり心が通い合ったと思ってるし、これから先もずっと通い合わせていくからな。離婚届なんて……絶対に出さねえぞ」
……わっ、なんか知らんけど「たっくんをいつまでもつなぎ留める作戦」が着々と遂行され、しかも成果を挙げてない?
栞は手を叩いて喜びを表明したかったが、神宮寺から片手をがっちりと恋人つなぎされっぱなしなので不可能だった。
なので、つないだ手をにぎにぎしておく。
すると、それに応えるかのように神宮寺からぎゅっと強く握られた。
「……それにしても、ワケのわからん専門用語とか法律とかを持ち出して、くどくどと理屈を捏ねくり回すやり方……」
登茂子が忌々しげに重ーいため息を吐いた。
「洋史にそっくりやわ。
……いや、容赦なく手加減知らずなうえに言いたい放題なところは……智史の方が似てるかもな」
……えっ、「お父さん」と「お兄さん」もこんな感じなん?
確かに、育った麻生の家にはこういう「しちめんどくさい」人はいない。栞はDNAの神秘にしみじみと思いを馳せた。
「それに……どうやらわたしに離婚届を出させたいとこまで……やっぱし兄妹やわ」