契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
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「……たっくん、家計のために仕事してっ!
それでなくても、あんな高そうな婚約指輪(エンゲージリング)注文したのにっ⁉︎」

あれから数日後、リビングのL字型ソファで神宮寺から抱き(すく)められていた栞は必死で「抵抗」していた。
神宮寺は先刻(さっき)から、ちゅ、ちゅ、と栞の顔中にバードキスをしている。

「だって、あれ……百万円はしそうなでっかいダイヤついてるやんかっ⁉︎」

実際のところは「桁違い」の一千万円だ。

「じゃあ……栞が二階(うえ)の仕事場まで連れて行ってくれよ?」

そう言って、神宮寺が笑うと垂れるアーモンドの形の瞳で、栞の目を覗き込む。

……それは、絶対にあかん!「混ぜるな、危険!」以上に生命(いのち)の危機やっ!

仕事場にしている書斎の奥は、寝室なのだ。
すでに、今までに何度となく引っ張り込まれて足腰立たなくさせられているのだ。

しかし……いかんせん栞の力は弱い。

「ほら……栞、立ちな」

神宮寺はもう引っ張り込む気力を最大限チャージしているらしく、栞を抱きかかえるようにして、ひょいと立ち上がらせてしまった。

「……栞が二階まで一緒に来てくれたらさ、ちゃーんと仕事するよ」

耳元で、神宮寺が甘〜い声で(ささや)く。

……ウソや、絶対にウソやっ!信じたら、あかんえっ!

栞の「野生の(カン)」が「理性」とタッグを組んでそう告げる。

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