契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
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神宮寺 タケルは、十七歳のとき、史上最年少でファンタジー小説作家の登竜門「日本ファンタジー小説新人賞」を受賞した。

そして、たまたま編集者から渡されてそれを読んだ大ベストセラー作家の町下(まちした) 秋樹(しゅうき)が、瞠目して大絶賛した。

町下は純文学の登竜門・茶川辰之助賞を受賞してデビューすると瞬く間にベストセラーを連発し、その数年後に今度はエンターテイメント性が認められて植木四十五賞を受賞した。
すると、当然のことながらテレビや雑誌からオファーが殺到したのだが、彼は大の人嫌いで文壇にすらほとんど顔を出さなかった。
そのうち「幻の作家」と呼ばれるようになった。

その町下が、神宮寺の受賞作の単行本が出版されるにあたり、帯の推薦文を寄せるどころか自らの手書き文字を載せる許可まで与えたのだ。

発売された本は、いきなりベストセラーとなった。神宮寺は「超大型新人の高校生作家」として、一躍「時の人」となり、マスコミから引っ張り凧となった。


栞も学生時代、その処女作「空の蒼 海の碧 山の翠」を買って読んだ。

町下が本の帯に『恐るべき十七歳。三島の「潮騒」以来の衝撃だった。』と記したのも、むべなるかな、と思う内容だった。

ギリシア神話に通ずる世界観と、透明感のある静謐な文体が、確かに三島由紀夫の「潮騒」を彷彿とさせるものだったからだ。


……せやけど、そのあとは()うたことないなぁ。

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