契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
『……ひさしぶりね、拓真』
「女優」の声が聞こえてきた。
『八坂さんっ、急に出ないでくださいよっ!』
池原のあわてた声が飛び込んでくる。
「……何の用だ……今日子」
神宮寺がモニターに向かって問いかけた。
『あら、ご挨拶ねぇ。こんな山奥まで、わざわざ来てあげたっていうのに。
……ねぇ、ここってほんとに京都なの?』
「限りなく奈良です」
栞は親切心で教えてあげた。
「栞、黙ってろ」
だが、すぐさま神宮寺に制される。
『とにかく、早く家の中に入れてくれない?』
モニターの向こうで「女優」……八坂 今日子は婉然と微笑んだ。
かつての神宮寺が恋に堕ちた……あの笑顔だった。