契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「ところで、今日子……なにしに来た?」
神宮寺は栞を抱きしめたまま、冷たく訊いた。
しかし、その頭の中では、今腕の中でばたばたともがいている栞に、一刻も早く彼らを追い出したあとで、どのように「釈明」すれば納得してくれるだろうか、と考えていた。
……ちっ、今日子のヤツ、余計なこと言いやがって。
神宮寺は舌打ちを百連発したいくらいだった。
突然「たっくんの過去」を聞かされた栞は傷つき、どうしていいのかわからないに違いない。
なんとなく静かなのも、そのためだろう。
そんな栞に、「言葉」でいくら「今は栞だけが好きなんだ」「そもそも、今までに栞以外のオンナにこんな気持ちになったことはない」と言ったところで、信じてもらえるとは到底思えなかった。
なので……やはり「最終的」には言葉に頼らず「態度」で示す以外の方法はなさそうだ、という結論に達した。
しかもそれは、神宮寺自身にとってもやぶさかではない方法だ。よって、一石二鳥の「名案」と思われた。
……栞は今夜、寝かせてやれないかもしれないけどなっ。
神宮寺の心は自然と浮き立った。