契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「あの『風間 優雅』と結婚できるなんて、って、あなたはうらやましいと思ってるかもしれないけど……」
今日子は、なんとか神宮寺の腕から脱出した栞を見て言った。
……が。
栞はまた曖昧な笑みを浮かべて、首を微かに傾げるだけだった。
今日子の眉がぐっと寄った。
「優雅のことも知らないのね?
わたしたち……まだまだ精進しないといけないわね」
「もしかして……風間さんとうまくいってないんですか?」
池原が眉間にシワを寄せて唸った。
ここへきて、今日子の「語り下ろし」の「最終章/とうとう出会った、彼との真実の愛」を変更するのは厄介だな、と思ったからだ。
そもそも「女優・八坂 今日子」が「イケメン俳優・風間 優雅」と結婚するからこその企画なのだ。下手をすると本の出版自体がなくなってしまうかもしれない。
「ふん……俳優の『優雅』とプライベートの『優雅』は違うのよ」
今日子はそう言って、女優ではない「プライベート」の「今日子」が抱く陰りを見せた。
ちなみに「八坂 今日子」は本名だ。