契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

神宮寺がそのあと、不遇の時代に入ったというわけではない。

受賞第一作として、高校生の純愛(不治の病に侵されたヒロインがラストで天に召されてヒーローが泣き崩れる系)を書いた。
同世代の作家が書いた「等身大の青春」ということで、その作品もまたベストセラーとなった。

さらに、今が旬の若い俳優たちをキャスティングしてフシテレビの月九でテレビドラマ化されて高視聴率を叩き出したのち、そのキャストのまま「なんでも引き受けるがきっちりと成果も出す」と評判の二池(にいけ) (たかし)監督によって映画化されて空前の観客動員数を記録した。

中高一貫の名門男子校に通っていた神宮寺は、その頃すでに高校生ではなく、KO大学に進学していた。

しかし、「日本ファンタジー小説新人賞」の記者会見で、初々しくはにかみながら『こんな賞をもらえて、とてもうれしいです』と答えていた「少年」は、もうどこにもいなかった。

ドラマと映画でヒロインを務めた女優との「熱愛」を皮切りに、神宮寺は写真週刊誌やスポーツ紙の「常連」へと様変わりしていた。


栞が処女作以降、神宮寺の著書を買っていないのも無理はない。彼がここ最近出版しているのは、雑誌のコラムをまとめた「エッセイ」ばかりだからだ。

それでもやはり、出せばランキング入りしてしまうほどの売り上げなのは……

テレビの各局が、彼を「コメンテーター」として情報系番組へ引きも切らさず出演依頼するのは……

写真週刊誌やスポーツ紙が、彼の私生活(プライベート)の動向を追いかけ回すのは……


神宮寺の……その風貌(ビジュアル)のせいでもあった。

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