契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「ふん、生憎(あいにく)だったな。おれは、相手が栞だから結婚したんだ。栞以外のだれと結婚するってんだよ?」

そう言い切る神宮寺に「あれ?」と栞が目を向ける。

「たっくん、最初はあたしたち、けい……」

『契約結婚するはずやったのに』
『あたしが引き受けへんかったら、しのぶさんにほかの人を探すように言うてはったのに』

と「正直に」申告しようとしたら、いきなりその大きな手のひらで口を塞がれた。

「栞、『余計なこと』を言ったら、今度はキスして口を塞ぐぞ」

神宮寺が耳元で声を殺して(ささや)く。

……それは、あかん。こんな公衆の面前で。

栞は「余計なこと」は言うまい、と決意した。


「ちょっとっ、あなたたちっ、イチャついてないでわたしの話を聞いてよっ!
先刻(さっき)『お話なら聞きますよ』って、言ったわよね⁉︎」

確かに、栞がそう言った。

「たっくんも、ほらっ……聞きましょうっ!」

なので、栞は神宮寺を振り(ほど)いて「聞く態勢」に入った。
神宮寺は「冗談じゃない、なんでおれまでもが⁉︎」と思ったが、栞にホレた弱みで従うことになった。

今日子はもう一口、カフェオレを飲んだあと、口を開いた。


優雅(ひろまさ)にはね……わたしなんかよりずっと前からつき合ってきた彼女(オンナ)がいるのよ」

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