契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
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「せやけど……あの様子やったら、おとうさん、絶対におねえちゃんに言うたはらへんやろなぁ」

神宮寺のカンヅメ先に移った栞は、早速家政婦(ハウスキーパー)として働き始めた。

そして今、あまり得意でない掃除をしているのだが(たぶん、あまり得意でないことをしているから)思わずそんな言葉が口に出ていた。

とはいえ、床掃除はルンバががんばってくれているし、最大の懸案事項だった暖炉は薪ではなく、実は「なんちゃって」の電気式ヒーターだったため、ほとんど掃除不要だったのだけれども。

だから、栞は今、リビングのローテーブルやダイニングテーブル、そしてアイランドキッチンなどの拭き掃除をしていた。


きっと、父親は姉の(やや)に結花との「結婚」を告げていないに違いない。昔から父親は、自分の都合の悪いことを自分の都合の良いように頰被りすることがあった。

……仕方(しゃあ)ないなぁ。

栞はため息を吐いた。自分が連絡するしかないようだ。この六月に東京で結婚式を挙げる予定の姉に、余計な心配をさせたくはないのだが。

……まぁ、本来はおめでたいことのはずやねんけどなぁ。

「それに……あたしが実家(じっか)を出て、先生のとこに来たことも報告しやなあかんもんなぁ」

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