契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
栞はため息を一つ吐くと、
「先生、帳簿のことはよくわかりませんけれど、巷では便利な会計ソフトがあるらしいですよ?」
と、言ってみた。
「ふうん……スマホでできるのか?」
「……どうでしょう?画面が小さいと、さすがにやりづらいと思いますから、一般的にはPCじゃないですか?」
「じゃあ、PCでもタブレットでも好きなのを買っていいから、ソフトをインストールしてやってくれ」
なんだか、「家計簿アプリ」でパパッと済ませようと思っていたはずのものが、えらくスケールアップした気がしないでもないが。
だが、ようやく少しは「アシスタントらしい仕事」ができるのかな?と、栞は前向きに考えて、取りかかってみることにした。
栞は早速、予備校のバイト帰りに家電量販店に寄ってノートPCを購入した。
ログハウスに持ち帰ったあと、Wi-Fi回線を使えるように設定し、申告書類に最低限必要な損益計算書や貸借対照表を作れる会計ソフトをダウンロードした。
そして今、勘定科目ごとに仕分けした領収証類を振替伝票の画面に入力していた。
自動的に総勘定元帳を作成してくれ、なんと損益計算書や貸借対照表にも連動しているのだ。
「……便利な世の中やわぁ」
会計処理のことなんてまったくわからないど素人の栞が、スマホで少しググって知識を得て会計ソフトを導入しただけで、ここまでできるのである。
思わず関心していると、目の前のスマホがヴヴヴッと鳴った。LINEが来たのだ。
【コーヒー】
二階にいる神宮寺からだった。