契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「うちの祖母ちゃんはハンバーグもスパゲッティも作ってくれたけど、身体のために食えって煮物とかそういうのも必ず食わされた。
……もう何年も前に、ガンで死んだけどな」
神宮寺の祖母の方はすでに鬼籍に入っていた。
「……あぁ、せやからあたしの『お晩菜』も黙って食べてくれはるんですね?先生はお若いのに、めずらしなぁって思うてました」
栞は思わず京都弁になっていた。
神宮寺やしのぶの前では、なんとなく標準語の方がいいかな、と思って遣っていなかったのだが。
ふとテーブルの向こうの神宮寺を見ると、なぜか虚を衝かれた顔をしていた。
「あ……すいません、ついうっかりして」
栞はあわてて標準語に戻した。
世の中には関西弁を不快に思う人がいる。
神宮寺がそういう人だったのかもしれない。