契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「なんで、元に戻すんだ。その方がしゃべりやすければ、訛っててもいい。それに……ここは京都だ」
……限りなく「奈良」やけどなぁ。
「それから……おれのことを『お若い』ってなんだ?」
神宮寺は今日一番の不機嫌な顔をしていた。
「……五歳しか、違わないじゃないか」
栞は地雷を踏んでしまった、と思った。
神宮寺が著名な作家であることを、いつの間にか失念していたようだ。とりわけ神宮寺のようなプライドの高そうな男性を子ども扱いするようなことを言うべきではなかった。
「も、申し訳ありませんっ!あ、あたしそんなつもりじゃ……」
栞はダイニングチェアから立ち上がって、頭を下げた。
神宮寺の機嫌を損ねて、ここを追い出されたら。
……あたしには、行くところがあらへん。
すると、そのとき……♪ ピンポーン とインターフォンが鳴った。
……助かった!もしかして、しのぶさんが来はったんかも。