契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

✿醜聞✿


リビングにあるL字型のソファに腰掛けた池原 (たかし)は、マンハッタンパッセージのブリーフケースから古湖社の社名が入った角二サイズの封筒を取り出し、ローテーブルの上に差し出した。

マンハッタンパッセージは防水性に定評があるだけでなく、ステーショナリーやスマホなど鞄の中で迷子になりやすい物をそれぞれ収納するポケットがいくつもあり、さらにはPCやタブレットなど嵩張(かさば)りがちな大きめのモバイル類もスッキリ収納できる仕切りもあって、バッグインバッグ要らずの優れモノとして、最近ビジネスマンに注目されているメーカーである。

池原の前にコーヒーを置いた(しおり)は、彼の持ち物がその鞄のそれぞれ収まるべき場所にきっちりと配備されているのを見て、

……うわぁ、この人、几帳面な人なんやろなぁ。

と、思わざるを得なかった。

「これが……週刊古湖から無理を言ってせしめてきた校正刷(ゲラ)のコピーです」

神宮寺が自然と身を乗り出す。

「……はぁ?」

彼の前にフランフランの象牙色(アイボリー)のマグカップを置いた栞も、好奇心が抑えられずについ覗き見してしまう。

「えぇ……っ⁉︎」

その瞬間、思わず、持っていたトレイを落っことしそうになる。

そこには、スーパーらしきところでカートを押す、パーカーにスリムジーンズというラフな格好をしたポニーテールの女性がでかでかと掲載されていた。明らかに気づかないうちに撮られていたというアングルで、目の部分を黒い線で覆っているということは、彼女は芸能関係者ではない。

なによりも……その「見出し」だ。


【超イケメン ベストセラー作家 神宮寺タケルの「京都妻」!】

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