契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

池原は、神宮寺が初めて映画化された作品でヒロインだったアイドル女優と別れたあとにつき合った、その映画ではヒロインの担任教師役をしていた女優の名を挙げた。

当時、青文字系雑誌の専属モデルが主で女優としてはこれからだった八坂 今日子との熱愛記事(スキャンダル)は、彼女の事務所(プロダクション)によって握り潰された。

しかし、その交換条件(バーター)として彼女の事務所が出版社側に提示したのは、すでにベストセラー作家になっていた神宮寺がその雑誌のコラムを連載してゆくゆくはその出版社からエッセイ本を出すことと、清純派で売っていた彼女のグラビアでのオールヌードとその出版社からヘアヌード写真集を出すことだった。

神宮寺はもちろん、女優の方もこれから先も芸能界で生き抜くためにその「仕事」を引き受ける。

そして……二人は破局を迎えた。

その後、彼女の「体当たり」の写真集が各方面に大きな反響を与え、やがて江戸時代の遊郭という苦界に身を落とす女の一生を描いた文芸大作が原作の映画の主役に大抜擢される。
現在、彼女は三十代になり、今や日本を代表するトップ女優にのし上がっていた。


「……まだ極秘ですが、風間(かざま) 優雅(ゆうが)と結婚秒読みらしいですよ」

彼は女子に人気の雑誌で、毎年「抱かれたい男」の第一位(ナンバーワン)に輝いている超人気イケメン俳優だ。

池原は、これ見よがしに神宮寺を見たあと、栞に目を移してニヤリと笑った。