契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
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「先生、なんで池原(ヤツ)に栞ちゃんがアシスタントだっていうことを言わなかったんですかっ⁉︎」

激怒りのしのぶが神宮寺に怒鳴った。

あのあと、池原を帰した(追い出した?)神宮寺は、すぐさましのぶに連絡した。
彼女は間がいいのか悪いのか、GWを京都市内で単身赴任している夫と過ごそうと思って、ちょうどこちらに来ていたのだが、到着した翌日にはもう神宮寺のいるログハウスに呼び出されていた。

「まぁまぁ、しのぶさん、落ち着いて……」

栞はしのぶの前に、カフェオレを差し出した。

カップとソーサーはフッチェンロイターの磁器(ポーセリン)、エステールのシリーズだ。さわやかなブルーで星の(きら)めきのようなモチーフが描かれているそのカップは、マグカップほどの深さがあり、しのぶがそれを気に入っていると聞かされていたので、すっかり「専用」になっている。
だから、昨夜池原が訪れたときには、栞は同じフッチェンロイターでもシンプルなバロネスホワイトの方を出しておいた。


さっぱりしていて姉御肌のしのぶを栞は頼もしく思い、ほわっとした「()天然」の栞にしのぶは庇護欲を掻き立てられ、すっかりお互い名前で呼び合う仲になっていた。

ただ、このログハウスに来ていきなり、
『栞ちゃん、大丈夫?まだ、あの「遊び人」から処女は守れてる?』
と、真剣な顔で「安否確認」されるのだけは勘弁してほしいのだが。

おそらく……しのぶにも「()天然」なところがあるのだろう。

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