契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「でも、まぁ……池原に気づかれたってことは、そのうちまた、別の社の編集者もここを嗅ぎつけてくるだろうな」
神宮寺が東京から姿を消して、そろそろ一ヶ月になる。だが、今の時代、大御所の文壇作家サマでもない限り、コラムを担当する出版社の編集者たちがわざわざ原稿を取りに来ることはない。
だから、神宮寺が彼らと直接顔を合わせるのは止むに止まれぬ打ち合わせのときくらいで、ちょっとした打ち合わせや原稿の送付などはすべてLINEやメールなどネットを介して行っているから、正直言ってこんなに早く「発見される」とは思わなかったのだが。
彼らがもし、このログハウスを嗅ぎつけてやって来たら、必ず栞と出会す。
「確かに……栞ちゃんはかわいい系の美人だから、いくら先生の『アシスタント』って言っても信憑性に欠けるわよねぇ」
しのぶが長いため息を吐く。
……いやいやいや。そんなわけ、ないやないですかぁ?年齢=彼氏いない歴の、まっさらさらの「生娘」ですよ?
「ど天然記念物」ゆえの所業であることは百も承知だが、それでも栞が目の前でぶんぶんぶんと、首と手を左右に振っているのは、ただ鬱陶しいだけなので、神宮寺もしのぶもこの際ガン無視だ。
「……そうだなぁ」
腕を組んで「思案」していた神宮寺が、ぽつりとつぶやく。