契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「……と言っても、あくまでも『マスコミ対策』だけどな。おれも、ハイエナのように嗅ぎ回るあいつらにはうんざりしてたから、ちょうどいい」
そして、神宮寺は「遊び相手」との醜聞だからこそ、なにかとおもしろおかしく記事に書かれるのであって、逆に栞が唯一無二の大本命……「妻」であれば一時は騒がれたとしても、他人の幸福よりも「他人の不幸が蜜の味」の世間はそれほど関心を長続きさせないのではないか、と言った。
どの道、マスコミの一つにバレたのだ。
そうなると、この先いかに「被害」を最小限に食い止められるかを考える方が、現実的でしかも効果的だ、というのが神宮寺の考え方だ。
「……それに、池原だって、『本当はもう「奥さん」なんじゃないんですか?』って思い込んで、しつこかったしな」
確かにそうだったな、とそれは栞も思う。
神宮寺のような売れっ子イケメン作家が、都会の喧騒を離れてこんななぁーんにもない山奥で、しかも妙齢の(と言っても、神宮寺より五歳も上だが)栞と人目を忍んで(なぜなら、神宮寺がここでカンヅメにされているのは、しのぶの会社ですらトップシークレットだったから)ひっそりと二人っきりで暮らしている、と知れば、そう思わざるを得ないのであろう。
「だけど……相手はマスコミですよ?
ただ『結婚しました』って言うのをそのまま信じてくれるほど、おめでたい人たちじゃないわ。徹底的に調べられて、もし入籍していないことがバレたらどうするの?……それこそ、醜聞だわ」
しのぶが無理だとばかりに首を振る。
「だったら……入籍すればいいじゃないか」
神宮寺はこともなげに言った。
栞が「……へっ?」と間の抜けた顔になる。
「もちろん、一生なんて言わないさ。
無料で引き受けろ、とも言わない。
報酬も払うし、ちゃんと『契約書』も作るぞ」