契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「……先生……本気、ですか?」

しのぶが信じられない目で神宮寺を見る。

「あぁ、本気さ……まぁ、こいつが引き受けてくれたらの話だがな」

神宮寺が栞の方を顎でしゃくった。

「せっ…先生はいいてすよ。その歳で今までさんざん遊んできたんですから。
でも……栞ちゃんは……そんなことをしたら、栞ちゃんの戸籍が……」

呆然と立ち(すく)むしのぶに、

「……ひどい言われようだな?
そもそも、こいつをマスコミに(さら)したくないからじゃなかったのかよ?」

神宮寺は盛大に顔を(しか)めた。

「だったら、神崎、ほかにバツイチになってもいいっていう女がいないか、探してくれ。そっちが『本命』だと思わせられたら、もうこいつにはマスコミもチョッカイ出さねえよ。
……あっ、口の固いヤツでないと困るぞ。それから、あとから脅して金をせびってきそうかどうかも、しっかり見ろよ」

「そっ、そんな都合の良い(ひと)がいるわけないでしょっ!なに考えているんですかっ⁉︎」

ついに、しのぶが「大噴火」した。


「あ、あの……」

栞がおずおずと二人の間に入る。

……もしかして、先生のアシスタントをクビにされる?……ということは、ここから追い出されるんやろか?……せやけど、おとうさんと結花のところにだけは行きたない……東京にいたはるおねえちゃんの迷惑にもなりたない……そしたら、もうあたし、どこへも行くとこあらへんし……

一気に不安が押し寄せてきた栞は、頭の中が渦のようにぐるんぐるんしていた。

だから……つい、言ってしまった。

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