契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
リビングのL字型のソファで、しのぶが置いていった弁護士から預かったという契約書の原案に栞が目を通していると、
「……どこか、気になるところでもあるのか?」
神宮寺がやってきて、隣にどかっと腰を下ろした。
「……本田……拓真……」
また栞の心の声がダダ漏れていた。
「なんだよ……いきなり人の本名を呼び捨てにするなよ」
神宮寺がぎろり、と睨む。
「すっ、すいませんっ……本名は違う名前なんやなぁ、って思うたらつい……」
しどろもどろになる栞に、はああぁーっと神宮寺が深いため息を吐く。
「あんた……本気でおれのことに興味ないのな?」
栞は気まずい笑みを浮かべた。
「おれのアシスタントになったときも、『契約』とはいえ結婚するとなったときも、おれのこと調べなかったのかよ?ふつう、Wikiくらいチェックするんじゃね?そりゃ、ウソも書いてあるけどさ」
そんなこと、栞はまったく思いもよらなかった。
「あのさ……契約結婚だってことがバレないためにも、最低限今からおれが言うことくらいは覚えておけよ?」
栞はぶんぶんぶん、と首を縦に下ろした。
覚えることは結構、得意分野だ。