契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

だが、神宮寺の有り余る熱を受け続けた栞には、たとえ「初めて」の経験であっても、彼から「求められた」のはセックスだけであることがわかっていた。

そこには、互いを狂おしいまでに求める「恋」も、互いがすべてを委ねて慈しむ「愛」も、存在しないということも。

所詮……栞は神宮寺にとって「仮初(かりそ)めの妻」なのだ。

にもかかわらず、栞は今までにだれからも乞われずにいた「求められた」(よろこ)びを、それこそ「肌」で実感していた。

……たっくんが、こんなふうにあたしのカラダを「求めて」くれはるんやったら。

男を通したばかりの途方もない痛みの中で、それでも神宮寺にはますます激しく何度も突き立てられ、穿()ちつけられていたというのに。

なにも考えず、だれかにただひたすらこの身を任せ、されるがままになっているのが、こんなにも心地よいということを知ってしまった。
男の手でこんなに荒っぽく扱われているのに、逆にえもいわれぬ「安心感」があることを、このカラダが覚えてしまった。

……せやったら、カラダだけの関係でもいい。

栞は生まれて初めて、そこに「自分の居場所」を見つけたような気さえしていた。

……たっくんがあたしのカラダを好きにしたいと思うてくれてる間は……「ここ」におれるから。


そして、そんなふうに思う自分が……
今までずっと……「寂しかった」のだ、ということに……

栞はようやく気づいた。

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