契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「『お気に召』すもなにも、これからは栞としかヤれないんだから」

神宮寺は栞のぷるっとしたくちびるに、ちゅ、とキスを落とした。

「えっ……ほかの(ひと)とは、しはらへんのですかっ?」

栞は大きな目を見開いて驚いている。

「せっかく結婚するんだから、週刊誌やスポーツ紙に追っかけ回されるのはもう懲り懲りだ。
……だから、おれの『お気に召』すように、がんばってくれよ?」

「……うーん、それはかなりプレッシャーかも」

とたんに顔を曇らせた栞を見て、神宮寺はくくっ…と笑い出した。

アーモンド型のくっきり二重の瞳の目尻が下がる。いつものバッファローホーンのフレーム越しでないから、栞の目に直撃だ。

……あ、かわいい。

思わず栞の胸の奥がきゅっ、と縮こまった。

「……どうした、『おれの奥さん』?」

頬が火照(ほて)ってくるのを見られたくて俯いた栞を、神宮寺が追いかけるように覗き込む。

……おっ、『おれの奥さん』?
なっ、なんか人が入れ替わらはったみたいに「甘く」なってはらへん?

打って変わって、今度は頬が青ざめてきた。

……もしかして、たっくんはカラダの関係ができた(ひと)には、こないな「甘々モード」に豹変しはるんやろか?

……ほんで、あたしのカラダに飽きて興味がなくならはったら、昨日までの「神宮寺先生」に戻ってしまわはるんやろか?

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