契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

……どこで、どうなって、そんな話になった?
しかも『不義の子』って、時代劇か?

神宮寺はため息を吐きそうになった。
だが、そんなことを言っても仕方ない。
相手は「()天然記念物」の(しおり)なのだ。

「たっくん……聞いてください」

栞は神妙な面持(おもも)ちそのものだが、神宮寺にはそれすら滑稽に見えて、おかしくて(たま)らない。

……もし今、その言葉を遮って、そのぷるっとしたくちびるを(ついば)んだりしたら、こいつ、すっげぇ怒るかな?

つい、そんな不埒なことを考えてしまう。

「ん?……どうした、栞?」

声はますます甘くなり、とうとう湧き上がってくる衝動が抑えられなって、その手触りのよい髪を撫で撫でしてしまった。

……あぁ、ダメだ。こんなんじゃ足りない。
そのくちびるに、キスしてぇ。


しかし、そこでふと我に返った。

……あれ?
おれ、ヤッたあとのオンナに対して、今までこんな気持ちになったことあったっけ?

記憶をたどっても、そもそもオンナと後朝(きぬぎぬ)なんてろくに迎えてやしないのだ。
行為(セックス)が終わると、さっさとシャワーを浴びてホテルの部屋から出て行くか、相手(オンナ)を出て行かせるか、の二者択一だった。


……栞に対して、こんな甘々になるおれって、
いったい、どこのだれだよ?

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