契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「以前、姉からなんとなく聞いた話では、母は震災後すぐに、以前から不倫していた近所に住んでいた既婚者と二人で駆け落ちしたらしいんですけど……」

……はあっ、W不倫かよ?

「どうやら、その不倫相手の人が、あたしの……本当(ほんま)の父親らしいです」

……あぁ、だから自分のことを『不義の子』って言ったのか。

「まさか、おふくろさんは不倫相手と二人っきりで逃げたのか?
……自分たちの間に生まれた、栞を連れて行かずに?」

栞はこくり、と肯いた。

「あたしは姉と一緒に『父』に引き取られて、祖父母に預けられました」

……まるで「托卵」だな。ひっでぇことしやがるぜ。

そこで、初めて栞の顔が少しだけ歪んだ。

「あたしでも、姉に無理を言うて教えてもらう前から、父の血の通った子ぉやないって気ぃついてたんです。
せやから、父も、亡くならはった祖父母も、そのことに気づいたはったと思います。
せやけど、あたしは分け隔てのう育ててもらうどころか、大学院まで出させてもらいました」

「……栞」

神宮寺はただしっかりと、栞を抱きしめてやることしかできない。

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