初恋の桜
1.

「やっべ!遅刻!!」



皿に乗っていたパンを口に詰め込み、速すぎて足が見えないんじゃないかってくらいのスピードで自転車をこぐ。



学校に着き、乱暴に自転車をとめて教室まで走る。



教室に駆け込めば担任が点呼を取っているところだった。



「ふぅ、セーフっと。」



「いや、セーフっと。 じゃねぇよ! お前出席番号1番だろうが。 とっくに呼び終わったぞ。 遅刻だ、朝霧。」



呆れ顔の担任に名簿でバシッと叩かれる。



「いってぇ!」



涙目で頭をおさえれば、どっと笑いが起きた。



「ほら、早く席つけ。」



「へーい」



多少担任のことを睨みながら席に付けば、



「朝霧くんってさ、かっこ良くて運動神経良いけどなんか抜けてて可愛いとこあるよね。」



という近くの席の女子たちが話している声が聞こえてきた。



…いや、可愛いって何だよ。



可愛いなんて言われても嬉しくねぇーつの!



不貞腐れながらぼーっと窓の外を見ていたら、教室の窓に桜の花びらが貼り付いていることに気が付いた。



そして、ふと思い出したのは、入学式。





あの日俺は多分、人生初の『一目惚れ』というやつをしたのだと思う。

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