初恋の桜



「陽太! 分かったぞ!!」



授業中以外ずっと見かけなかった塁が昼休みに息を弾ませながら声をかけてきた。



「ああ、さんきゅ。 で、どうだった?」




「夕暮桜親衛隊。」




…はぁ?




予想外な塁の言葉にきょとんとする。



夕暮桜親衛隊?



ってことは桜先輩絡みなのか。



「聞いたとこによると、夕暮先輩にはファンクラブがあるらしい。 で、あの男はその一員。」



「つまり、桜先輩信者の逆恨みか。」



「そゆこと。」



…そういう事か。



ならよかった。



俺がフッた女絡みだったらマジでムカついてたわ。



俺のせいじゃねぇからな。




「てか、さすが塁だな。 顔と学年の情報だけで詳しい情報集めてくるなんて。」



塁は昔からダチが多いし、情報収集に長けている。



だから俺は塁に例の睨んでくる男についての情報収集を頼んだのだ。




「だろぉ? まあ、俺の手にかかればこんなもんよっ!!」



…褒めると調子乗るところがたまに傷だけど。




「じゃあつまり、アイツが俺を睨んでくるのは、昨日桜先輩が俺の名前を聞いたからか。」



「そそ。 まあ、昨日のはかなり目立ってたからな。 で、どーすんだよ? 今のところは1人に睨まれる程度で済んでるけど、親衛隊のメンバーは結構いるらしいし。」



団体で来られたらひとたまりもねぇよな…



「とりあえず、様子見る。 なんかされたら対策考えるわ。」



「余裕だねぇ。 モテ男くんよ。」



「なんかその言い方うぜぇ! しゃーないだろ。 今のとこ直接被害に遭ってる訳じゃねぇから迂闊に手出しするわけにもいかねぇし。」



「まあ、そうだよな。 俺もなんかあったら手貸すからさ。」



「ああ、わりぃ。 そん時は頼むわ。」



「いいってことよっ!!」



うん、やっぱコイツめっちゃ良い奴だわ。



俺が女だったら塁に惚れてたな。




「んじゃま、学食行こうぜ。 奢り、だろ?」



「おう! なに頼もうかなぁ。 奢りだからなぁ。 やっぱスペシャル定食か。」



「うわ、お前容赦ねぇな。 あれ1番高い上に数量限定だろ! でもまぁ今日はいいか。」



「よっしゃ! 陽太、太っ腹ぁ〜」




塁にはいつも助かってるからな。



そのお礼だと思えば安いもんよ。



「塁、いつもさんきゅ、な。」



「うおぅっ! 陽太がデレたぞ!! レアだー!」




たまには感謝も伝えねぇと。



言葉に出さねぇと伝わんねぇこともあるから。

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