初恋の桜
3.
1時間目と2時間目はぶっ通しで化学の実験。 化学室へ向かうために幼馴染の石原 塁と一緒に廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あの、朝霧くん、ちょっといいですか。」
振り向いてみれば、恥ずかしそうに頬を染めて立っている1人の女。
チラリと塁を見れば、 「先行ってるぞ」 と言って歩いて行ってしまった。
女についていきながら、思わずため息が出る。
…コイツ、マジ誰だよ。
喋ったことも見たこともない女。
だけど女がなんの目的で俺を呼び出したのかくらいは想像がつく。
だからこそ、正直めんどくさい。
わざわざ授業の前じゃなくてもいいじゃないか。
これでは授業に遅れる可能性もある。
さて、どう断ろうか……