初恋の桜



着いたのは人気のない空き教室。



「あの、一目惚れしましたっ!
付き合ってくださいっ!!」



深く頭を下げて手を出した女。



それを上から見下ろしながら、俺は女の言っている 『一目惚れ』 というものについて考えていた。





『一目惚れ』 ?



何だよ、それ。



結局、お前が好きなのは俺の顔じゃん。






……と、中学までの俺だったら言っていただろう。



でもあの日 "彼女" に出会い、俺は 『一目惚れ』 というものを体験した。



『一目惚れ』 は容姿とか関係なく、人間の本能なんだ。



分かっているからこそ、優しく答える。



「ごめん、キミのことよく知らないから。」



すると女は予想通りの言葉を返してくる。



「じゃあ、友達になってください!」










……ああ、やっぱりムリだ。



いくら 『一目惚れ』 というものを理解していたとしても、告白を断る度に言われ続けてきたその言葉には苛立ってしまう。



女という生き物は、馬鹿なのだろうか。



よく知りもしない上に自分に好意を寄せている女となんでダチになんかならなきゃいけないんだ。





「…ごめん。」



本音を飲み込んでもう一度答えれば、女は泣きながら去っていった。



< 6 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop