夢の続きを
「真白」
私の名前を呼んだ途端、海翔は何かを決断したような凛々しい顔つきに変わる。どんなに成長してしまっても、初めて話したあの日からこの目だけは変わらない。
ーー意思の強い、黒い瞳。
「来年優勝して、オリンピックに連れて行くからな。……誰が何と言おうと、真白は俺が連れて行く」
「海翔……」
名前を呼ぶことが私の精いっぱいだった。今の言葉には、どういう意味が込められているのだろう。
「だから、信じてついて来て欲しい。夢だった場所へ、一緒に行こう」
昔のように、何も考えずに思うまま行動することは難しくなってしまった。わがままを言わずに諦めることも増えた。
今の海翔の言葉が無ければ、危うく本当に大事なものまで手放してしまうところだった。
「……うん」
今はまだ、期待半分、不安半分だ。
ただ、これだけは分かる。
海翔はずっと、二人分の夢を背負って生きてきたこと。
「私に、夢の続きを、見せてください」
気付けば私の方が励まされている。
震える声に、海翔は嬉しそうに、笑った。
終わり