壊れそうなほど胸が苦しくて
彼女の名前は、川島凛子 24歳。
ナガセの2つ下にあたる後輩だ。
2年前、新入社員の彼女が初めてうちの職場にやって来た時、俺は思わず目を丸くした。
スラッとしたモデルのような体型、
綺麗に伸びたロングヘア。
そしてぱっちり二重の綺麗な顔立ち。
見た目は、ケツメイシの代表曲“さくら”のPVに出演している女性にそっくりな可愛い子だった。
本来であればその女優さんの名前を拝借してこの子のあだ名をつけるべきだったが、
名前を知らなかったので、
曲名から“サクラ”というあだ名をつけた。
「凛子ちゃんのあだ名はサクラです。」
という事に周りからは、
“ややこしい!”と不評だったけど、
ナガセは俺の顔を立ててくれて、一緒になって彼女のことを“サクラ”と呼んでいる。
サクラには、本当の理由は教えず、
「新入社員だったから!」
という謎な命名理由を伝えているけど、
このあだ名を本人はかなり気に入ってくれたようだった。
『私は耳が聞こえないけど、
桜の美しさは目で感じる事ができる。』
この言葉がとても印象的だった。