壊れそうなほど胸が苦しくて
“ブーブー”
机の上に置いていたスマホがLINEの通知を知らせる。
<虎さん、今日のプレゼンファイト!(^_-)>
斜め前に座るサクラを見ると、
朝からお腹いっぱいのスマイルを見せながら頷いてきた。
<任せとけ!>
すぐに文字入りのスタンプを返す。
彼女は、生まれつき耳が全く聞こえないという障がいを持っている子だった。
初めは驚いたが、
サクラが入社してくる少し前、
うちの会社の社長が、
“これからは社会福祉にも貢献していく”
というメッセージを出していたので、
その手始めとしてサクラのような子を雇用したんだと納得した。
だけど俺も含めて職場の皆、
手話なんてものは出来ない。
だからサクラとはメールやLINEを通じてコミュニケーションを図っていた。
傍から見れば、
“あそこの部署はみんな仕事をしながらスマホをいじっている”
と捉えられるかもしれないが、
サクラが入社してきて早2年。
机の上にスマホを置いて仕事をする風景も見慣れたものとなった。