壊れそうなほど胸が苦しくて


何やらサクラとの会話を終えたナガセと一緒に会議室へと向かう。


聴覚に障がいを持っているサクラだけど、

それを補うかのように、
あの子は読唇術を心得ていた。


口の動きを見て何を話しているか読み取ることが出来るその能力は、

彼女がこれまで歩んできた人生で培った努力の賜物だと思う。


会話のキャッチボールはさすがに筆談やLINEを通さないときついけど、

こちらからサクラに何かを伝えたいときは普通に話しても大体通じる事が出来る。





「あの子、何だって?」


「“お昼、私1人?”って聞いてきました。

多分俺らが取引先の人達と一緒にメシ食うと思ってたんじゃないですか。」


「なんだそんな心配してたのか。
じゃあさっさと終わらせて早めに戻らないと。」


「別にいいんですよあいつにそんな気遣い。下手に焦ってプレゼンミスらないでくださいよ。」


「大丈夫だって。
今日はお前に全部任せるから。」


「・・・・・は!?」


「そろそろお前にも経験積ませてやらないとな。」


「・・・相変わらずスパルタだな虎さんは・・。」



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