壊れそうなほど胸が苦しくて
――――――
「ナガセ、これやるよ。」
ナガセと共に出張していた石神工業の帰り、助手席に座る彼に封筒を渡す。
「なんですかこれ?」
ナガセは早速封筒の中身を確認し出した。
「名前ぐらいは聞いたことあるだろ?
あの有名な五つ星ホテルの食事券1万円分。」
「・・・・どうされたんですか?」
「この前、同期の結婚式に参加したんだけど、二次会のビンゴで当たった。」
「そういう系は1回も当たったこと無いって言ってませんでしたっけ?」
「そうなんだよ。腹の底から“ビンゴ!!”って叫ぶ人達の気持ちが良く分かった。」
「こんな高価なもの頂けないです。
奥さんと行ってくればいいじゃないですか?」
「小っ恥ずかしいから俺達はそういうのいいんだよ。ナガセの方が有効に使えると思ってさ。」
ナガセはしばらくその紙をじっと見つめながら、何やら考え事をしているようだった。
「・・・俺がどういう使い方してもいいんですか?」
「おお!俺が持ってても宝の持ち腐れだから、逆に助かるよ。」
「分かりました。
じゃあありがたく頂きます。」