壊れそうなほど胸が苦しくて



中に入ると石神工業の山野さんが既に工具一式を準備してくれていたので早速作業にとりかかる。


「久し振りだな機械いじるの。」


田中課長は意気揚々と腕まくりをした。





“3ヶ月前に交換した部品に、正規のものが使われているのか実際に見てみる”


この発想は、当時の作業報告書と伝票で判断していた俺やナガセには到底思い浮かばなかった。


報告書や伝票という記録として残っていた紙切れを見て判断したけど、

サクラは、
“この目で見ないと分からない”と言った。


この発想に、サクラのこれまでの生き方が少し垣間見えた気がする。


耳が聞こえない分、
視覚を使って物事を見定め、
自分の目で見たものを信じる。


“百聞は一見にしかず”
ということわざがあるけど、
俺も見習わなきゃな・・・。



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