【BL】貴方を好きになっていいですか?
「…すみません。お願いします」
と言った。
僕の母は僕が小さい頃に交通事故で死んだ。
信号無視の車に跳ねられた、と父は言っていた。
ずっと男手一つで僕を育ててくれていた父だが、同じ会社に通っていた二歳下の女性……直貴の母と恋に落ち、やがて式を挙げる事になったのだ。
「……よし、これで荷物は全部運んだよな?」
僕が腕で汗を拭っていたら、直貴が上着のポケットからハンカチを出して、僕に差し出してきた。
「はい。本当に助かりました。有り難うございました」
此方に向けてきた直貴の笑顔は、男の僕でさえも少しドキッとするような美しい顔だった。
―――これが僕と直貴との同居生活の始まりだった。