ひとりかくれんぼ《都市伝説》
友達が死んだ。
電車に轢かれて、顔は潰れて、腕や脚は曲がるべき場所を無視して、曲がるべきではない所を曲げて。
異様なオブジェのような、気の狂った天才と呼ばれる芸術家が赤い絵の具をふんだんに吸い込んだ粘土を捏ねて作ったような、気違いな格好で。
少し前まで、俺はその友達の隣で何をするでもなく、電車を待っていた。
いつもの帰り道だと思っていた。
それは簡単に一変して、俺は何もない胃から胃液を吐き出して、友達の、その尋常とは思えない姿を目を閉じることも、逸らすことも出来ずに、大きく見開いて、叫び声をあげた。
遺書は見つかっていない。
突き落とされた形跡もなく、警察は「突発的な、自殺」と見てこの事件に終止符を打った。
家族も、それに疑問を抱くことはなく、葬儀はしめやかに行われて、俺は葬儀に出席はせずに、…というよりは出来ずに、部屋に閉じこもって布団に包まって震えていた。
両親や、他の友達は「友人の死を見たショックで…」と思い、慰めてくれたが、それは半分正解で、半分間違えていたことを誰が知っていただろう。