-SHORT STORY- 涙雨 ナミダアメ 〜届かない心〜
君が忘れられない。

半年前……。

僕は、アパレルメーカーの社員。

君は、化粧品メーカーの社員だった。

同じビルで働いていた。


今……。

僕は、アパレルメーカーの社員。

君は……どこに行ったの?



半年前……。

僕は、君が好きだった。


今……。

僕は、今でも、君が好きなんだ。


明るいブラウンのロングヘア、

君の笑顔、

背筋の通った立ち姿、

一生懸命、仕事をこなすところ、

颯爽と街を歩く姿、

君の涙。


今は、何もかも見えないんだ。


君は、僕と別れてから、違う職場に移った。



もう君は、僕のこと、忘れた?

僕は、君のことが忘れられないのに。

忘れたいのに。


いつも、駅ですれ違うたびに思い出すんだ。


そして、忘れられなくなる。

君をぞんざいに扱ったことを後悔し、

優しくできなかったことを後悔し、

君と別れたことを後悔するんだ。



「ごめん」「終わりにしよう」



君にそう言われた日に引き留めずに、



「うん」「さよなら、元気で」



そのまま別れたことを、

後悔しているんだ。






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