星をつかまえて……。
 僕は今日も留美の病室へやってきた。

 今日も大丈夫そうだ。その顔は優しい微笑み。でも、この微笑みをいつまで見れるのだろう……。

「お兄ちゃん、今日はお星様……見れるかな」
「どうかな」

 窓の外を見ながら悲しそうに目を伏せる留美。

 今日は少し曇っており、今にも雨が降りそうな天気だった。

「晴れないかな……ねえ、お兄ちゃん」
「そうだね」

 残念そうに窓から眼を逸らし、ベットに潜り込む。

 その瞳は寂しそうな色を蓄えて揺らいでいく。

「お星様……捕まえたいな」
「……留美」

 そう囁く声に、僕はどう反応したらいいのだろうか。

「お兄ちゃん」
「なんだい?」

 僕の目を見つめ、逸らす事なく何かを伝えようとしている留美の瞳。

 その瞳を見ているのが、何故だか分からないが辛い。

「わたしが……私が、死んだら」
「――っ! るみっ」
「お星様……捕まえられるかな」

 頬を伝い、流れ落ちていく涙は留美の手を濡らしていく。

 涙は止まる事なく、次から次へと溢れては、またこぼれる。

 留美、なんで泣いているの?

 なんで、星を捕まえたいの?

 僕にも分かるように教えて欲しい。


 そして今日は星が見えなかった……。
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