オレ、キューピッド
野球部の練習エリアではバッティング練習している者、ピッチング練習している者、走り込みをしている者など
今は各々が必要なメニューをこなしているようだった。

『瑠璃垣、練習見てるだけでなんかあんのかよー』
『まあまあ、いいからいいからぁ』

ぼんやりと野球部の練習を眺めているとギャラリーは女生徒ばかりなのに気がつく。
男はオレたちだけで居心地が悪かった。

『あれ、瑠璃垣さん…と逢坂くん?』
『え』
『あー!ぬまぐっちー!どうもどうもー!』

沼口先輩オレのことついでみたいに…

『どうしたんですか?野球部見に来るの珍しいですね』
『んー、ゆうちゃんが野球に興味出ちゃってみたいで』
『お、おい!』
『そうなんですか!せっかくだし二人とも体験入部してみますか?』
『い、いや、オレは…』
『ぜひ!体験入部!』

ジャージ姿に着替えたオレたちはグラウンドの隅で準備体操をしていた。

『おい、瑠璃垣、なに勝手なこと言ってくれてんだ』
『いいじゃんいいじゃーん、楽しそうじゃん』

瑠璃垣は初めて野球をやるのが楽しみなようだ。
本来の目的、忘れちゃってねーか?

新入部員に混ざったり沼口先輩にひとしきりの基礎を教えてもらったりして時間は過ぎていった。
それから上級生に混じって守備練習やら、模擬試合形式の練習をしたり色んな練習をこなしていく。
いやこなせなかった。

オレはグラウンドの脇で倒れていた。
文化部に所属し日頃運動をしない軟弱な体では全くついていけなかったのだ。

一方瑠璃垣はめちゃくちゃ活躍していた。
守備をすればダブルプレー、バッティングもガンガンヒットを飛ばし得点に繋げている。
驚異の身体能力をみせていた。
はいはい、どうせ不思議なちからでも使ってんだろ。
と疑ったが瑠璃垣いわくなにもしていないらしい。


『すごい……!』
『え…?』

隣で沼口先輩の呟きが聞こえてきた。
うっとりとした眼差しで瑠璃垣を見つめている。
お、おい、これは…まさか!
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