獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「カイル様」


アメリは膝間付くと、カイルの手の甲に唇を落とした。


「たとえこの世の全てがあなたを拒絶しようと忌み嫌おうと、私は信じております」


再び手を取り、微笑を浮かべ、驚いたように固まっているカイルを見上げる。


「あなたはこの国をお救いになる、唯一無二の希望の光です」


大きな掌に、頬を寄せる。




しばらくの間、カイルはなされるがままにアメリに掌を預けていた。けれども、やがておもむろに動いた指がアメリの顎先を捉えた。


無意識のうちに、アメリは目を閉じる。


顔を、カイルの指先が滑っていった。


額に、瞼に、頬。


まるでその存在を確かめるように、指先がアメリの肌を堪能していく。


やがて指は、唇に触れた。


柔らかな感触を指先に刻むように、ゆっくりと形がなぞられる。


そっと瞼を開ければ、どこか艶めいた眼差しの天色の瞳が視界に入った。


「俺は……」


何かを言いかけて、カイルは口を閉ざした。


そして、苦しげな顔を見せる。


やがてカイルはアメリの唇から指を離すと、アメリとの繋がりを断ち切るかのように顔を背ける。


そして、何も言わずに大聖堂から出て行った。



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